日経新聞によると、厚生労働省は、6月27日、副業・兼業の促進に関する指針の改定案を労働政策審議会(厚労相の諮問機関)に報告したようだ。「企業に対し、従業員の副業・兼業を認めているかどうかや、認めている場合の条件などをホームページで公表するよう促す。7月上旬の改定を予定する。」と報道された。
厚労省は、すでに、企業も働く方も安心して副業・兼業を行うことができるようルールを明確化するためガイドラインを制定しており、令和2年9月にそのガイドラインを改定している。その内容がさらに加速された内容に改定されるのであろう。
※参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
すでに、副業を解禁している企業は、大企業も含めて増加してきており、さらにそれを加速する施策なのであろう。少子高齢化、労働力の減少、ミドル・シニア労働力の活性化、コロナ過での経験から現実味を見せてきた働き方改革の更なるドライブなど、企業は、新しい労働環境の構築と運用に新たな可能性の扉を開けざるを得ない。
また、従来は、企業にとって、マイナス面が前面に出ていた副業であるが、プラス面(従業員の自主性や意識改革の醸成、新たな技術や発想の取り込み推進、本業だけではカバーできない業務量変動の吸収など)にも目が向いてきている。
また、従業員としても、経済面の収入補間という従来からの目的以外に、自身の新たな成長や経験の機会創出、さらなる将来キャリアへのチャレンジなど、多くの点で、雇用側も雇用される側も多種多様なメリット・デメリットが議論されるようになってきた。(※副業解禁のメリット・デメリットは、下記参照先の記事を参照されたい。) ※参考:https://workstyle.ricoh.co.jp/article/side-job.html
私の以前、副業解禁について関心があって、色々と調べている時に、あるユニークな企業のオーナーと話す機会があった。
その会社は、数十名の従業員の会社ではあるが。創業時から全社員、副業OKで、以下の二つの条件をクリアすれば副業の申し入れを拒まないという。
・本業と競合になるような業種でないこと。
・副業での体験談を社内で報告すること
その場で、実際に副業を行っている社員の声も聞いたが、副業は、自分の関心のある業務内容を選択しているので楽しい、面白い。また、社内と異なる人たちとの関わりがとても新鮮で刺激的だという。さらに、その体験は、本業へも良い影響を生んでいるのではないかと語ってくれた。
また、オーナーはこうも言っていた。本業の方ではどうしても長い企業人人生で、自分があまり好まない業務を担当してもらうような巡りあわせもありえる。当然、そうあってはいけないので、本人だけではなく会社側もそうならないように努力はするが、でも完全にそうならない場合もないとは言えない。そのような場合でも、従業員本人には副業の方で充実感を得てもらって、両方で自分の働く上での精神的な心のバランスをとって貰えたら嬉しい。
また、副業での体験を社内で発表して貰うことについては、従業員本人が社外の活動で体験して得たことを社内で他の社員へ共有して貰って、お互いに影響し合って欲しいと考えていることと、決して、副業は会社にとって好ましいことではなく、社内で得られない就業機会を社外で得る機会やチャンスだという副業を後ろ向きでは考えていないことをアピールするためだとも語っておられた。当然、副業を強く推奨はしているわけではないので、副業をしてない社員も当然いるし、副業をするかしないかでその両者を比較や評価は当然しない。
それと、副業している社員からは、毎月、本業の業務時間以外に、副業での就業時間数を自己申告してもらっている。これは、あくまで自己申告であり、雇用者としての従業員の安全管理配慮義務(注)の一環であると言っておられたことがとても印象的であった。働き方の多様化、雇用の流動化、自律的なキャリア構築への意識改革など、そのような雇用環境を用意できる企業であるかどうあも就業者からは、企業を選択する際の条件の一つになるのであろう。
少し前の刑事ドラマではないが、「面白くなってきたんじゃないー!」てか?
注:安全配慮義務とは、従業員が安全かつ健康に労働できるようにするため、企業が負う義務のことでで、 2008年に施行された労働契約法第5条によって明文化されている。 かつては労災によるケガの場面などで、安全配慮義務の違反の有無が問題になっていた。