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スーパーバイザーがいないと実践力は高めれないか?

 令和 2 年に厚生労働省からの委託調査事業として、「 キャリアコンサルタントの実践力強化 に関する調査研究事業 報告書」をキャリアコンサルティング協議会が作成しネットに公表されている。

 <※リンク先:https://www.mhlw.go.jp/content/000768592.pdf

 

 この報告書では、時代の進展と共に人生100年時代のキャリアの問題は、より広範囲に、高度化へと加速され、それに応じるため、キャリアコンサルタント(令和3年1月現在の登録者数:56,623 人)の専門性と実践力を増していくために「スーパービジョン」の受講が有効であり、それに応じられるスーパーバイザーを養成し、キャリアコンサルタ ントが必要なスーパービジョンを受けられる環境を整備することが必要であると記述されている。

 この中では、スーパーバイザー試行養成プログラムとして、16日間の標準カリキュラムとその試行の結果が報告され、今後とも身近にスーパービジョンを受けられる環境の充実や推進が重要である、と結んでいる。詳細な内容は、上記リンク先の報告書をご覧いただきたい。

 

 

 ここで、キャリアコンサルタントの分野から離れて、他の分野の事例について二つほど触れてみたい。

 まずは、IT業界のシステム開発の世界でのお話です。

 コンピューター(電子計算機)が様々な用途の異なる業務目的でもプログラミンというコンピュータ言語を用いて、それぞれの目的に合ったアプリケーションソフトウェアを作成していくという「汎用機(系)」メインフレームとよばれる一種の専用機。)が登場したのが、1960年代~70年代である。この汎用機というコンピューターは、大型で、高速だが、大変高価でした。使うプログラミング言語もコボルとかフォートランという今のプログラミング言語に比べると使用するコマンド形式と数値配列などに、とても専門性が求められ、熟練するにも長い時間がかかっていた。

 このような「汎用系」に相対するものとして登場したのが「オープン系」という、汎用機よりも小さく、コストも安いコンピューターであるワークスステーション(Unix・Linux系)やパソコン(Windows系)である。

 両者が大きく異なるのは、計算処理やデーターベースを管理するホストコンピューターが、汎用機(専用機)ではなく、それよりも小型でコストも安く、扱うプログラミング言語の種類も多い「オープン系」である。最初の「汎用機(系)」が、クローズドで運用されていて、色んな技術ドキュメントや他者が作成したプログラム資産が非公開がほとんどだったものが、「オープン系」は全部ではありませんが、公開されていたり、他者の作成したプログラムを流用する可能性も高くなってきたのである。

 

 したがって、クローズドの「汎用機(系)」と違って、「オープン系」という名前が示す通り、多くの人が利用しやすい環境で、さらに短期間で発展していったり、一部のコンピュータ―資産(OSなど)が無償で提供されだしたのである。インターネット環境の普及と共に、色んな利用環境や技術をオープンにして、共同利用することで、低コストで、短期間に広がっていった。

もう一つのキャリアコンサルタントの分野以外のお話ですが、これは、私が図書館の書物で知ったので、どこまでこの内容が実践として現場に広がっているか分かりませんが、ケアマネージャーという介護支援専門員の方たちの活動のお話である。(※写真が図書館から借りてきた本の表紙である。)

 

 この本は、さまざまな悩みを抱えながらもスーパービジョンを受ける機会を持たないケアマネージャーたちの資質向上のために、兵庫県の委託で兵庫県介護支援専門員協会が実践した介護支援専門委員のトレーニングに使用するテキスト作成のプロセスがきっかけで作成された。

 スーパービジョンとして経験と実践が長い熟練のスーパーバイザー(奥川幸子さんという指導者の手法や枠組み:OGSV方式)を元にして、試行錯誤でグループ事例検討会で、一冊の自分たちでスーパービジョンを行うマニュアル本としてまとめられたようである。

 

 当然、この参考書を使って自分たちでスーパービジョンをするには、それなりのケアマネジャーとしての知識やスキルも必要でしょうし、実力のあるスーパーバイザーの同席の方が各ケアマネージャーの方の成長には有効なことは確かであろう。しかし、周りにスーパーバイザーがいないとか、利用するには費用と何回も定期的に受けられない、などの現実性を考えるとこのような取り組みも現場としては一つの取り組みとして有効だと思う。

 さあ、どう感じられたでしょうか。

 ITの世界での高速で、性能はいいが、クローズドで、高価な「汎用系」とそれに比べると速度や性能の点では劣るとしても、安価で、資産や技術が公開されている「オープン系」のお話をした。(注:現在は、オープン系でもかなり性能や速度は増しており、複数台で並列分散処理を行うとトータルの性能は汎用機に引けをとらない。)

 

 また、ケアマネージャーさんたちの例ととして、熟練のスーパーバイザーのノウハウをもとにスーパービジョンを自分たちで行うためのマニュアル的な参考書を作成して、スーパーバイザーがいなくても実践力は高められるのではないかというお話をしました。

 

 冒頭のキャリアコンサルタントのスーパーバイザー養成のお話と結びつけると、皆さんは、何を感じれましたでしょうか。スーパービジョンが現場のキャリアコンサルタントの実践力を高めるに有効であることは、当然納得がいきますよね。しかし、その延長で、従来通りの発想の養成講座をクローズドで運用して・・・結果、われわれ現場のキャリアコンサルタントにとって、今以上にスーパービジョンの機会が身近になるかどうか。何か、他の分野の事例なども参考に、新たなアプローチが求められているような気がしてならない。