企業内のマネージャーがメンバーに相対するに際して、「傾聴」、「対話」、「受容・共感」という言葉やスキルとして良く聞かれるようになってきた。また、このごろでは、上司が部下と面談する際に、「1on1(ミーティング)」という面談スタイルを多くの企業でも導入しだしているともよく聞かれる。
改めて「1on1」をネットで検索してみた。
【以下引用】 <出典:https://media.bizreach.biz/19522/>
1on1(1on1ミーティング)という対話の手法が、組織の活性化や人事施策として注目されている。1on1はもともと、人材獲得競争が激しいシリコンバレー発祥といわれており、他社に人材を流出させずいかに育成するか、その一つの手段として用いられるようになった。
日本ではヤフー株式会社が2012年に「1on1」を導入した。ヤフーによると「1on1ミーティングとは、組織運営の向上を目指し、最大限の潜在力を引き出す目的で部下のために行う面談のこと」である。1on1は上司が部下の話を聴く時間であり、ヤフーでは実施のためのガイドラインが用意されている。ガイドラインには上司が部下の話を聴くために必要な「コーチング」「ティーチング」「フィードバック」の3つが要点として整理されているらしい。
なるほどー、「最大限の潜在力を引き出す目的で部下のために行う面談」とは、何やらキャリアコンサルティング的な雰囲気を感じる。
別のネットには、上司部下の従来の面談(例えば、人事評価面談と1on1との比較を記載された記事があったので、それを図表にしてみた。(※下図表を参照)
この比較図をみても、「傾聴」、「成長」、「キャリア支援」、「部下が主体」という言葉があるように、非審判的な「カウンセリング」の要素がみてとれる。また、「ストレスフルな状態にしない」とは、これも最近の企業内の職場環境でよく言われる「心理的安全性」(※文末の注を参照)にも通じると考えられる。
どうだろう、この企業内の管理者にもカウンセリング的な機能、「傾聴」「対話」「キャリアの成長」「ラポール」などがスキルとして要求されるようになってきているということである。ただし、当然、従来の業務に関することや人事評価的な内容や目的でのメンバー面談は、指示的に行われることが多いのであろう。しかし、その場の目的によって、カウンセリング的な態度で接することも必要とされるということである。企業内の従業員としては、キャリアを考えるという機会が、より身近になってきているという点から考えるととても良いことであるし、また、逆に、カウンセリング的な傾聴スキルのみでは、キャリアコンサルタントとしての強みのアピールとしては従来よりも弱くなっていくのかもしれない。だから、今まで以上に、キャリア構築の理論や手法、社会のキャリア形成の事例情報、また、企業外の社会としての利用できるリソース情報やネットワークの活用などの知識やスキルがより専門性という点で求められるのだということであろう。単なる人の話が聴けるという「傾聴」のみのキャリアコンサルタントの存在では、世の中から必要とされないし、忘れ去られて行くのだろうと思う。
さらに、企業内の管理者や経営層を含めたより広いステークホルダーと共に企業人のキャリアの成長に、キャリアコンサルタント自身のポジションや存在価値をどう位置付けるかということが現実化してきたと思う。とても面白くなってきたと私は思うし、心を新たにしたいという緊張感も感じる最近である。
注:心理的安全性とは、ハーバード大学教授・エイミー・エドモンソンの提唱で、さまざまな組織で調査を行った結果、心理的安全性をもった組織は、メンバー同士の会話でどのような発言をしたとしても、メンバーから嫌われたり、関係が壊れたりすることがなく、安心して自分の意見や考えを言える状態のことを言う。
この理論を世界に広めたのは、Google(グーグル)で、「効果的なチームとは何か」の研究を開始して、自社組織に適用して成功したことが有名である。