知り合いのキャリアコンサルタントから「オープンダイアローグ」という集団療法を最近トライアルしていると聞いた。この知り合いのキャリアコンサルタントは、長期の求職活動を強いられている若年者支援や引きこもりなどの若年・中年求職者の支援をしている。
このキャリコンが言っていた「オープンダイアローグ」とは、相談者(患者)と集団でのミーティングでの繰り返しの対話を通して、相談者(患者)の症状緩和を目指す療法のことらしく、単に手法というばかりではなく、実践のためのシステムや思想を指す言葉でも使われているようだ。1980年代にフィンランドのケロプダス病院で始まったようだ。
集団ミーティングの参加者は、患者(相談者)、家族、友人、医師、看護師、セラピスト、キャリコンなど、患者(相談者)に関わる全ての人が対象となる。集団ミーティングは基本的に全員参加で、支援者チームでの話し合いもすべて患者(相談者)の眼の前で行い、患者(相談者)の同意なしに進めることはないということが基本ルールである。
このオープンダイアローグを導入した西ラップランド地方では、統合失調症患者の入院治療期間が平均19日短縮された。また、通常治療では服薬が必要な患者が、この療法後は35%しか必要としなかった。さらに2年後の予後調査では、再発がないか軽微なものにとどまっていた患者は82%(通常治療50%)、再発率も24%(同71%)と大きな成果を上げていると報告されている。
(出典:https://www.hakuhodofoundation.or.jp/kodomoken/column/talks/talk01/)
これまで薬を使うことが前提だった統合失調症の治療が、対話だけで解決できるのです。対話全般のあり方を見直す上でも大きな可能性があると思います。
この手法で特に目をみはる独自な手法として、「リフレクティング」という手法がある。例えて言えば、患者(相談者)の前で支援者チームの専門家どうしが、患者(相談者)の噂話をするような形をとって、お互いの意見を交換し合う手法である。具体的には、患者(相談者)の評価や今後の方針などを、専門家同士の対話のなかで話し合ってみせるのである。例えば、「この人はこういうことをがんばっていると思う」とか「努力が及ばないときには治療を受けてみるのもいいのでは」などのように、患者(相談者)について支援者間で話し合っているのを患者(相談者)が、その支援者の輪から少し離れたところで客観的なイメージで聞いていることになるのである。
そのせいか面と向かって話す場合よりも、支援者である専門家の話をしっかり聞いてくれるようである。同じような例に例えると、子どもの目の前で、両親が子どものがんばりを評価し合ったり、褒めたりして、普通にほめるよりも子ども自身に喜ばれるという感じである。
日本におけるオープンダイアローグの普及は、オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)が中心となって進めており、日本の精神医療を大きく変える可能性があるのではないかと注目されてきている。
この手法の注目されるのは、先に述べた「リフレクティング」以外に以下のような特徴があげられる。
●ひたすら対話を続けること自体が大切であり、それのみが「対話の目的」である。
●アドバイス、説得、議論はしない、正論かどうかではなく、患者に受け入れられるかどか。
●支援者は最低2名以上の複数名のチームで行い。1対1という支配的な上下関係を排除する。
●患者に治療者を観察してもらう「リフレクティング」を行って、患者の客観視を第一とする。
●話したくないことは引き出そうとせず、自(おの)ずから話したくなるような時を待つ。
この今までと異なる新たな可能性をもったオープンダイアローグの考え方や基本的な手法は、キャリアコンサルティングにおいてもとても参考となる部分があると興味がわいた。