【図表1】
「プレゼンティーズム」と「アブセンティーズム」という言葉をよく聞くようになってきた。それは、これらのワードが企業における従業員の健康に対する「投資対効果(ROI)」を測るための指標として注目を集めているからである。
「プレゼンティーズム」とは、
プレゼンティーズムというのは、「出勤しているにも関わらず、心身の健康上の問題が作用して、パフォーマンスが上がらない状態」をさす。
例えば、のどが痛くて会議に集中できなかったり、メンタル面の不調が続いていて思うような成果がだせないなどがあげられる。単純に、発熱、二日酔い、寝不足などの不調な状態で働くという一過性のものもプレゼンティーズムの一種である。
「アブセンティーズム」とは、
一方、アブセンティーズムとは、「心身の体調不良が原因による遅刻や早退、就労が困難な欠勤や休職など、業務自体が行えない状態」の原因で、休業となって就業ができない状態をさす。これらの状況では、業務に携わる機会自体が減少するため、結果としてチームや組織の業務生産性や業務効率が落ちる要因となってしまう。
企業への損失は、「プレゼンティーズム」>「アブセンティーズム」
図表1を見ていただきたい。これは、厚生労働省のコラボヘルスガイドラインに事例として紹介されている「米国金融関連企業の健康関連コストの全体構造」である。ご覧いただいたように、「プレゼンティーズム」がコストの半数以上を占めている。
「プレゼンティーズム」「アブセンティーズム」どちらも企業が、「健康経営」に取り組む上で向き合わないといけない問題ではあるが、とりわけ「プレゼンティズムの改善」は早急に取り組まなくてはならない課題である。
【図表2】
健康リスクと労働生産性の関係は・・・
図表2を見ていただきたい。これは米国の調査研究結果であるが、健康リスク数が増えるほど、労働生産性(プレゼンティーズムとアブセンティーズム)の損失割合は上昇する。特に、プレゼンティズムで顕著に労働生産性が損失することになる。
つまり健康経営の実践を通して従業員が健康になれば、プレゼンティーズム・アブセンティーズムの改善、それによる医療費・保険費削減、従業員の業務意欲向上、企業の労働生産性を底上げできると考えられる。
健康経営、従業員のエンゲージメント向上へ
従来の企業内のメンタルヘルスケアは、この「アブセンティーズム」に注目しており、どちらかというとネガティブなメンタルヘルスマネジメント推進というイメージが強い。一方、近年のメンタルヘルスケアは、この「アブセンティーズム」だけではなく、「プレゼンティースム」の減少をも対象に考え、従業員が高いエンゲージメント意識をもち、ワークに対する強いモチベーションをもったポジティブメンタルヘルスケア、さらには「健康経営」の実現という大方針実現へと向かう印象をより強く感じる。