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日本の常識は世界の非常識!~労働者の睡眠~

 日本も過去のサービス残業の慣習化や企業での働き方改革推進による労働時間の短縮化などで、かつての昔と違って、企業労働者の平均勤務時間はかなり少なくなってきているという印象もあり、さぞかし労働者の平均睡眠時間も増えてきているのではないかと勝手に考えていた。しかし、現実はそれとは大きく異なる状況のようだ。

 「世界睡眠シンポジウム」なるものがあるらしく、その報告レポートを読むと、日本は、先進国の中でも恐ろしく労働者の平均睡眠時間は少ない国であるようである。

 また、その睡眠時間の少ないことは、労働者の健康を害する悪因となるだけではなく、企業自体の事業実績や労働の生産性の点からも非常に悪い影響を与えていることをも知って更なる驚きであった。

 上の左の図表を見ていただきたい。世界各国の国民の平均睡眠時間と国民一人あたりのGDP(国民総生産)の対比である。とても低い位置に日本の現状があることがわかる。また、上の右の図表は、働き方改革で、社員のNo残業Day化が進められた結果、その分の業務処理量が管理者に向けられたためか、管理者の睡眠時間が悪化したことで、本人たちのストレスやメンタル面での悪影響で精神的な平常性が劣化し、部下など周囲へ感情的な矛先が向き、上司から部下へのハラスメントが増加しているという考え方の報告である。全く恐ろしい状況の実態が報告されている。

 当然、その件もあって、左の図表に見る通り、企業内の労働者の精神障害請求件数は右肩昇りの増加傾向を表している。この結果からもさらに企業での事業運営の生産性は低下せざるを得ないのが実態であろう。 

 また、最近よく聞く言葉に「勤務インターバル制度基準」として、11時間を守るべきという国の指導がされていることも知った。この勤務インターバル制度基準とは、一人の労働者のある勤務時間終了から翌日の勤務時間開始までに、11時間をあけないといけないという考え方の制度である。

 

 欧州連合(EU)では1993年に「EU労働時間指令」を制定し、すべての労働者に対して、24時間につき最低連続11時間の休息期間を付与することを定めた。EU諸国はこれに基づき、国内法を定めることが義務化されている。(※小室淑恵 氏のレポートより引用)

 

 一方、日本ではEUのように義務化ではなく企業の努力義務として求められるに留まったらしい。これは、「平成30年就労条件総合調査」(厚生労働省)で「導入している」と回答した企業の割合は1.8%、直近の「平成31年就労条件総合調査」においても、「導入している」と回答した企業の割合は わずか3.1%であるという実態が大きくのしかかっているということでやむを得ないのだろう。

 最後に、もう一度、最初の左の図、平均睡眠時間と国民一人あたりGDPの相関図をみてみると、ある種、皮肉な解釈ではあるが、わが国日本は、平均睡眠時間を1時間上げれば、日本のGDP値は倍になるということも言えるわけでこれだけの今後の伸びしろがあるとも言えないことはないのであろう。

 

※各図表の出典:

小室淑恵 氏のレポート「睡眠シンポジウム2022」より抜粋<https://logmi.jp/business/articles/327088